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    そんな風におぼえていてくれるとは思ひがけなかつた。

    練吉はさつきから一人で喋つていた。

    「いや、なに」

    その時、練吉はぐつと盃をつきつけた。

    きよろりとした眼でしきりと家の中をのぞきこみながら、しばらくして

    「フム」

    「――?」

    「ですが、一体財産譲渡つて云ふのはいつのことなんです、大分前ぢやないですか」

    「ホリョ?」

    「徳さん。追鮎は君のといつしよに活かしといてもらはうか――どつこいしよ」

    「相沢さんも見えないな」

    「先代がぽつくり死にましてね。おかげでこんな所へ引つこむやうになつてしまつたんですが」

    「え、何です、前期と後期とをつゞけさまにうかりましたつて。――ふうん、それやえらいもんですな。なかなか、あの検定試験といふやつは、医学校なんかの年限さへ来ればずるずるに医者になつてしまふのとはちがつて、相当な目に合はされますからな」

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